EP.3「星占いの魅力って?」


アヤさん「はい!やって来ました星詠みブログ!! 今週は星占いの魅力です!!」


ざきさん「おぉぉぉぉぅいえぇぇぇぇぇぁあ!」


突然のハイテンションでビクリと体が震えた。

アヤさん「ほれ、ちゃんと覚えておったであろう」


アヤさんは勝ち誇ったというか、どちらかというと意地の悪そうな笑みを浮かべた。

ざきさん「んで、何の話すんの?」


アヤさん「決めてないわ」


思わず盛大にテーブルに突っ伏して額をぶつけてしまった。

アヤさん「おーおー、これぐらいの事で心を乱しては先が思いやられるぞい」


ざきさん「おお ゆうしゃ よ。 こんな ところ で たおれて しまう とは なさけ ない」


本当に、この二人は人のペースを乱す天才だと思う。

アヤさん「さて、じゃあ今回はワシが中心に喋ろうかのぅ。ざっき、補足とブレーキよろしく」


ざきさん「補足はともかく、ブレーキはめんどくせぇな」


アヤさんは、さて、と言って左手で頬杖をついた。

アヤさん「前回の話で、星占いには長い歴史があることは分かってもらえたろう」


ざきさん「忘れてたらちゃんと復習するんだぞ! そこのアンタも!」


ざきさんは一体どこに向かって喋っているのだろう?

アヤさん「では、今回はその中身だ。占星術は、星の位置や相関関係から意味を見出す占術だ。となると、重要なのは占う対象の時間、時点だ」


ざきさん「自分の生年月日にするのか、それとも明日のとある時間にするのか。その時点の星々の位置を記したのがホロスコープさ」


アヤさん「自分の生年月日にすれば自分の人となりを知れるだろうし、明日の時間にすれば明日どんなことが起きそうか予見することもできる」


未来の・・・予知。そんなことが可能なのだろうか。

アヤさん「出来んこともない」


頭の疑問を見透かしたかのように、アヤさんはハッキリと告げた。

ざきさん「ただ、どうだろうねぇ。そいつが面白いとは・・・思えねぇけどなぁ」


ざきさんも見透かしているようだった。けれども、それよりも、二人の言葉の意味が気になった。

アヤさん「まぁ、ここから先の話が聞きたければ、今は星占いの話を聞いてもらおうかね」


ざきさん「焦らない焦らない、一休み一休み」


なんだか、はぐらかされたような気がする。

アヤさん「ところで、一般的に私は牡羊座ですとか、俺は獅子座だとか言うであろう?」


ざきさん「ちなみに俺とアヤは蠍座」

アヤさん「あれはな、正式には太陽星座というのだ」


太陽の星座?

ざきさん「自分が生まれた時間に太陽がどこの星座の位置にあったのか?ということだよ」


・・・ということは、

アヤさん「おお、察しがいいな。実は、星占いで使う惑星は太陽だけじゃない。ほれ、ざっき」


ざきさん「太陽、水星、金星、月、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星!よしゃ全部言えた!褒めて!!」


アヤさん「むしろ星詠み師のくせに言えんかったら叩き斬るところよ」


ざきさん「待て、お前もたまに間違うよな?」


アヤさん「違いますー、笑いを誘うための演技ですー」


ざきさん「じ、実は俺もそうですー、わざてやってるんですー」


二人が言うと真実味があるのだか、ないのだか・・・

アヤさん「さて、アホな茶番は終わりにして。星占いがよくつけられる難癖がある」


ざきさん「星占いは人の性格を12に分けているだけだ、ってな」


アヤさん「それで済むんだったら数千年も続かんわ」


ざきさん「それなー。星占いで使う惑星は10個。そして星座は12個。つまりパターンとしては10の12乗通りあることになる」


10の12乗、ということは10を12回かけるから・・・

アヤさん「1兆通りだ」


1・・・「兆」!?

アヤさん「1兆なぞ、もはや小学生ぐらいしか使わんよなぁ」


ざきさん「しかも、出す方法によってもっとパターン数が増える。1700兆くらい、いくんじゃねぇの?」


1700・・・兆?

アヤさん「更にショックを与えるとだ。自分と同じ星座の配置、つまり同じホロスコープの人間が生まれるには『2万5000年』ほどかかる」


ざきさん「インフレ半端ねぇよな。ドラゴ○ボールかよ」


・・・ちょっと、色々と追いつかない。
スケールがあまりにも大き過ぎる。

アヤさん「つまり、星占いっていうのはな。その人は"1兆分の1の確率で生まれた人間"だと、2万5000年という遥か悠久の刻を待って、ようやく生まれてきた命だということを保証してくれくれるのだ」


ざきさん「ちぃっとクサいが・・・人は誰しも宇宙から祝福を受けて生まれてくる、そんな風に感じさせてくれるんだよなぁ」


アヤさん「このロマンチストめ」


ざきさん「おいこらお前もだろうが」


・・・いったい、何なのだろうか。
そうだ、なんということはない。

星占いというものはただの占いだと、雑誌などにほんの1P足らずに書いてある、気休めのようなものかと思っていた。

しかし、この二人の語るそれは、今までの自分の見知ったものとは大きく異なっていた。

星詠み。太陽星座。ホロスコープ。天文学的な数字。これには、この先には一体何があるというのか。

得体の知れない高揚感を胸に感じながら心は好奇と不安が入り混じり。

そして、両目は二人の、何かを含んだような笑みを捉えた。

アヤさん「さて、そろそろ前置きは良かろう」


ざきさん「だな、いよいよ本腰を入れてきますかー」


アヤさん「おーおー、今回も良い感じに疲れそうじゃー」


ざきさん「仕方ねぇだろ、自分で選んだんだからよ」


目の色が変わった。そう形容するしかない変化だった。

二人はこちらをじぃっと見つめる。その目はどこか遠いものを見つめているような気がした。

だがそれでも、射抜くようなその視線は、こちらの息を止めるのに十分すぎる鋭さだった。

どれくらい経ったか。
その視線もふっと鋭さが緩み、そして二人は芝居がかった仕草で立ち上がる。

その動作に衣は優雅に揺れ、その二人の口が静かに告げる。

「「いらっしゃいませ。星詠み亭・エピカにようこそ」」



アヤさん「・・・」


ざきさん「・・・・・・・」


アヤさん「・・・・・・・・・・」


ざきさん「・・・・・・・・・・・・・」


アヤさん「うっわ、だっさ!恥ずかし!!」


ざきさん「ぎゃはははは!やっぱ無理だって無理無理無理無理!吐き気がする!!」


アヤさん「いくら流れに変化つけたいからって、この演出はねぇよな!?ねぇわ!!」


ざきさん「イケメンだけに許されるって演出だわ!ほんっとにアイツ、変な提案しやがって!」


・・・えっと、あの?

アヤさん「あー、まあ、とりあえず、次回は"太陽星座とは何か"から解説するわー」


ざきさん「おっし、休憩しよー」


開いた口が塞がらない・・・今回は不安どころか終始置いてきぼりだった。

このペースで話が続くとなると、次回は一体どうなるんだろうか・・・。

次回「太陽星座ってなあに?」


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