ざきさん「ぬ、ぬぉぉぉぉ…」
さっきから、ざきさんの様子がおかしい…
アヤさん「休憩中になんぞ変なもんでも喰ったか?」
ざきさん「戸棚にあった、インスタントの豚骨ラーメンを…」
いつの間に食べたんだこの人
アヤさん「おお ざっき よ そんな もの で はら を くだす とは なさけ ない」
ざきさん「うるせーやい!いや、あれなんだわ。食ってるときに違和感はあったんだよ。舌触りとかツンとした酸味とか」
アヤさん「あれであろう?確かいつぞやの客がお礼にと持ってきてくれたモノだろう?どれほど昔か忘れたが」
ざきさん「あー、そんなことあったな。で、違和感が凄いからとりあえずなんか色々ぶっかけてたら違和感がなくなるどころか増えてな」
アヤさん「なんでそこで退かないの?バカなの?死ぬの?」
ざきさん「昔は鉄の胃袋って言われてたからな。相手はラーメンだ、負けはしねぇ。俺にもそこらのブツには負けねぇってプライドってもんがあるわけよ。まぁそのプライドも無残にぐおおぉ...あかんマジで○にそう…わりぃ、ちょっと『考える人』になってくるわ」
いや、あの像は決してそんな意味の…あ、行っちゃった
アヤさん「はぁ。では、バカは放っておいて、月の満ち欠けについて話すかの。まず、『1ヶ月』とは月の満ち欠けが元になっている」
あ、だから『月』という言葉を使うのか
アヤさん「うむ。その昔、月は暦の基準であり、その光は生活する上で大切な光源だったのだ。さぞ綺麗な月明かりに照らされていたことだろう」
確かに。電気の明かりがなければ、満月の光はとても強いことを思い出す
アヤさん「つまり、人というのは月と密接に生きてきた。それだけでなく、潮の満ち引きは何が原因か知っておるか?」
あ、月の引力
アヤさん「そう、地球の海は月の引力に大きな影響を受けている。そんな星の上に生きている生物が、月の影響を受けずに済むと思うか?」
いや…思えない
アヤさん「そう。つまり、月の満ち欠けについて知ることは、自身のバイオリズムを知ることでもある」
お、奥が深い…
アヤさん「では、今回は月が満ちていく過程を説明しよう。まずはスタート、新月だ」
新月は、確か全く見えない、光が届かない月だ
アヤさん「うむ。まぁ実は見えなくもないんじゃがな。その昔、新月が1ヶ月の始まりだった。その日のことを『つきたち』と呼んでいたのが訛って『ついたち』になったのだ」
え、そうだったの!?
アヤさん「…人が月と共に生きることを忘れて久しいからの。ともかく、新月は新しい始まり。新しく物事を始めたければ、この時期を狙いたいな」
そうだったんだ…あまり意識したことがなかった
アヤさん「そして新月が満ちていき、やがて三日月になる」
確か、三日月は一番美しい形であると聞いたことがある
アヤさん「うむ、その通りだ。さて三日月は、新月で始めたことをやりつづける新鮮な時間だ。そしてここで止めるから三日坊主とも言われる」
そうだったんだ…!
アヤさん「嘘だ。咄嗟に出てきた思いつきだ」
………
アヤさん「さて、次に月は上弦になる。いわゆる半月だな。もし始めた物事がここまで続いているのであれば、最も勢いの強い時期とも言える」
どんどん仕掛けていく時期?
アヤさん「そうではあるが、少し熱を上げすぎる恐れもある。月の満ち欠けの4分の1という節目なのだから、整理することも重要だ」
なるほど、進むだけではないんだ
アヤさん「そして月は十三夜月、小望月と呼ばれる時期に入る。これは、一言でいうと、締め切り間近だ」
…てんやわんや?
アヤさん「うむ。物事は始めるよりも完成させる方が難しいものだ。情熱や熱狂だけでなく、冷静にまとめることも必要とされる。内面の強さを問われる時期だな」
月って、各段階でそんな意味合いがあったんだ
アヤさん「うむ。もう忘れ去られようとしていることではある。しかし人の身体は今も昔も変わらん。代わり映えのしない日常などと悟ってカッコつけず、月と共に生きることをおすすめするの。その方が変化もあって楽しいであろ?」
月と共に生きる…なんだか、詩的な響きだ
アヤさん「さーて、そろそろざっきは…」
扉の向こうから『俺はだ、だいじょうぶぶぶぶぶ…』という声が聞こえる
だ、大丈夫かな
アヤさん「ノックしまくって煽ってやるか、手伝え」
止めてあげてください
次回EP23.「月が欠けていく過程」
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