真実など、ありはしない…?
アヤさん「不思議なもんでな、人というのは真実、つまり正解というモノを探したがる」
ざきさん「正解ってのを追い求めるから迷いが生じるわけだ。例えば今日は豚骨ラーメンにしようか味噌ラーメンにしようか」
アヤさん「待て待て、あまりにも些末すぎるだろ!」
ざきさん「俺にとってはめっちゃ重大な案件なんやぞ!」
アヤさん「アホか!」
ざきさん「今更か!」
アヤさん「知ってたわ!全く………ともかくだ。どっちの道が正解なのか?と人は迷うものだ」
ざきさん「問題は、じゃあ正解ってなに?って話だ」
正解とは…何か
ざきさん「結論を言ってしまうと」
アヤさん「んなものは勝手に決めちまえ」
は?そんな乱暴な!?
アヤさん「ほう。では聞くが、その正解とやらは一体どこの誰が決めてくれるのだ?」
ざきさん「そしてそれが正解だと、誰が保証してくれる?」
うっ…
アヤさん「ワシとざっきは別の人間だ。むろん、お前さんともな」
ざきさん「豚骨ラーメンと味噌ラーメン、どっちを食べた方が良いのか。そんなのはその人の趣味嗜好その他の要因による」
アヤさん「そもそも、うどんかも知れんしソバかも知れんし、更には食べない方が良いかも知れんしな」
ざきさん「月並みな言い方だけど、人の数だけ正解がある」
アヤさん「では、これを食事の問題から占いが当たっているのか当たっていないのか」
ざきさん「占いを信じるのか信じないのか、というテーマにしてみると」
…そんなものは勝手に決めろ?
ざきさん「そういうこった。他人である俺たちが決められる事じゃない」
アヤさん「獅子座だから堂々としている、蠍座だから執念深い。それが当たっているのかどうかなど、俺たちには分からんよ」
ざきさん「占いは統計学と言われることがある。膨大なビッグデータを基にした統計。でもな、その統計データを実際に見たことがあるやつなんていねぇんじゃねぇのか」
アヤさん「大体は遥か昔の占い師たちが言ってきたことを踏襲している。そしてそれを金科玉条としてありがたがる後世の人間がいる」
ざきさん「そしていつの間にか流派が出来る。流派が出来ると派閥争いが始まる。どっちが正しいかってな感じによ」
アヤさん「いわゆる『答え』を知っているというイメージがある占い師の間でも、何が正解か間違いかをやり合ったりもする。ホロスコープひとつにしても、方式によってガラリと変わる」
ざきさん「あとはどっちが正当か、どっちが元祖か、なんて争いもあるな。それこそまるでラーメン屋同士のケンカみてぇd」
アヤさん「いい加減ラーメンから離れんか!!腹でも減ってるのか!?」
ざっき「い、いや別に?ちょっと場を和ませようかと思って」
アヤさん「とにかく、だ。そのような争いにはワシらは興味がない」
ざきさん「確かに俺らは生れた時の星回りを見て、その人を語りはするさ。これから先のことを予言したりもする」
アヤさん「だが、同じことを話しても、反応は実に千差万別だ。喜んだり悲しんだり複雑な顔をしたり。同じ言葉を聞いているはずなのに、人はそれぞれ違う受け取り方をする」
ざきさん「おかしいもんだよな。もし唯一無二の、それ以外絶対にないって正解があるとしたら?皆それに従うはずだし、反応も同じはずだ」
アヤさん「だが、そうではない。人は自分が見たいものを見て、聞きたいものを聞き、受け入れたいものを受け入れる。それがどういうことを意味するか分かるか?」
…あぁ。そうか。自由なんだ
ざきさん「そう、人は生まれながらにして自由だ。本当は自分の人生を思うがままにコントロール出来る」
アヤさん「だが、そのことに気がついてない…否、その事を忘れてしまった人々もいる」
ざきさん「だから俺たちが語る。あんたはどういう人でどういう人生を歩むのかって」
アヤさん「占いは人の人生を決めつけるという批判があるが…実に可笑しな言い分だ。当たっているか否かなどどうでも良いのに」
ざきさん「信じたいなら、信じれば良い。遥か昔から伝わってきた星のお伽噺通りに生きてみれば良いのさ」
アヤさん「信じたくなければ、信じなければ良い。断固として拒絶し、自分の未来は自分で創れば良いのだ」
ざきさん「いずれにせよ重要なのは、制約があるからこそ人は自由になれるってことだ」
アヤさん「原っぱで自由に遊べと言われても何をしようか困るだろう」
ざきさん「じゃあそこにボールを渡してあげたらどうだ?サッカー、バスケ、単なるキャッチボール、遊びと楽しみ方はいくらでも出てくる」
アヤさん「占いは人の人生を束縛したりはしない」
ざきさん「人を自由へと、解放するモンだ」
アヤさん「というかだな?占いなどという大昔のどこぞの誰かが言った怪しげな概念に自分の人生を支配されてどうするというのだアホか」
ざきさん「おいおい、落ち着けって。精神的に弱ってたら仕方がなかったりもするだろ」
アヤさん「そうではある。だが自分の人生を他人に預けてどうするというのだ。たったひとつの、代えの効かない大切なものであろうに」
ざきさん「確かにな。せっかく生まれたんだ。人生の安売りはするもんじゃねぇよ」
占いは人に自由にする
たったひとつの代えの効かない、大切なもの
はぁぁ…。なんだか、先まで聞いていた話が恐ろしい内容だったから…少し安心してしまった。
ざきさん「まぁ、占いってのをしっかり正面から見てもらいたかったからな」
アヤさん「占いの中に、いや世界に真実などはありはしない」
ざきさん「あるのは事象と無数の選択肢と決断、そしてそれを支える意志や思いだ」
アヤさん「ワシが思うに、な。人生とは正解を追い求める時間の事ではない。『選んだものを正解にしていく時間』なのだ」
選んだものを、正解にしていく…
アヤさん「さて、随分と話し込んでしまった。そして…」
ざきさん「あー、そろそろ、頃合いだな」
頃合い?
ざきさん「最後の最後に俺たちが伝えること」
アヤさん「それは、この場所の役割、そしてお前さんが誰なのかということだ」
―――!
遂に、来た。遂にその話が―――
アヤさん「結論から言うと、お前さんは地球という星で修行を終えて天に還り、もう一回生まれ直ろうとしている魂だ」
ざきさん「んで、ここはそういった魂たちがもう一度地球に行く前に訪れる場所の一つだ」
………
えっ?
アヤさんざきさん「「えっ?」」
次回最終EP「そして許されぬことはない」
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